苦痛の少ない大腸カメラのために①
前回は、大腸カメラに伴う苦痛を軽減するための手技、「用手圧迫法」についての勉強会の様子をご紹介しました。
今回のブログでは、「どうして大腸カメラで痛みが発生するのか」と、「痛みを軽減させる工夫」についてご紹介します。
大腸カメラで痛みを感じる原因
大腸カメラに伴う痛みの感じ方には、腸の長さや形状、手術歴などで個人差があり、痛みをほとんど感じない方もいれば、敏感に感じる方もいます。
大腸カメラで痛みが生じる主な原因には、以下のことが考えられます。
- カメラの挿入による痛み
大腸はじゃばらのホースのような構造をしています。ただカメラを挿入していくだけでは、腸管が押されたり引っ張られたりしやすく、負担がかかり痛みを感じやすくなります。
- 空気で腸が拡張することによる痛み
腸の中をしっかり観察するためには、空気を入れて腸管を膨らませ、視野を確保する必要があります。空気が腸管を圧迫することで、お腹が張ったような不快感や痛みを感じることがあります。
- 腸の炎症や癒着による痛み
過去にお腹の手術を受けたことがある方や憩室炎をしたことがある方は、大腸が周囲の臓器とくっついてしまう「癒着」が起こることがあります。癒着があると、カメラがスムーズに通らず、腸が引っ張られることで痛みを感じることがあります。
- その他の原因
やせ型や小柄な体型の方、肥満体型の方も痛みを感じやすいことがあります。
痛みを軽減させる工夫
- 鎮痙剤・潤滑ゼリーの使用
腸の動き（ぜん動）を一時的に抑えるために、鎮痙剤（ブスコパン）を筋肉注射します。ぜん動を抑えることで、カメラを挿入しやすくなります。ただし、緑内障・心臓疾患・甲状腺機能亢進症・前立腺肥大症などが既往にある場合は使用できません。
また、「検査前の下剤で何度も排便してお尻が痛い」と言われることがよくあります。カメラの挿入をスムーズにするために、潤滑ゼリーや局所麻酔入りゼリーを使用するのでご安心ください。
- 腸の形を整える
苦痛なくカメラをスムーズに挿入するためには、「用手圧迫」で腸が伸びないようにサポートしたり、体位変換や呼吸がポイントになります。
大腸カメラは左向きで横になった状態でスタートしますが、途中で仰向けになっていただいたり、場合によっては右向きやうつ伏せになっていただきます。
適切なタイミングで体勢を変えることで、腸の形が変わり、曲がり角が緩やかになります。関節の痛みがある等で体位変換が難しい場合は、できる範囲で大丈夫ですし、クッションを使うなどしてサポートします。
また、検査中に「息を大きく吸って止めて下さい」と声かけがあります。息を吸って止めることで、肺が膨らんで横隔膜が大腸を固定してくれます。そのため、無理に押さずにカメラを挿入することができます。
- CO2ガスの使用
検査の際、大腸に空気を入れて膨らませ腸内を観察しますが、その空気が腹部の痛み、張り、不快感などの原因になります。このような症状を軽減するため、当院ではCO2ガス（二酸化炭素）を使用しています。CO2は空気に比べて腸管内で速やかに吸収される特性（空気のおよそ200倍）があり、腸内に長時間空気が残らず、痛み等の症状を和らげる効果につながっています。
- 鎮静剤の使用
不安が強い方は、鎮静剤（静脈麻酔）の使用も可能です。
鎮静剤の効果は個人差があり、完全に眠ってしまう方もいれば、ぼーっとする程度の方もいます。
副作用として、血圧低下や呼吸抑制が起こる可能性があり、心電図、酸素モニター等を装着して検査を行います。
検査終了後は目が覚めるお薬を投与しますが、安全のため、１時間程度病院内でお休みになってから帰宅していただきます。また、検査の日は１日中、車の運転や自転車の運転ができなくなるため注意が必要です。
今回は、大腸カメラの痛みを軽減させるための、当院での工夫についてお伝えしました。その他にも、なるべくリラックスして検査を受けていただけるようにお声がけするなど、環境づくりにも注力しています。より良い検査のために、気になったことやご意見があれば、ぜひ教えてください。
長くなってしまったので、痛みを軽減させるための患者さんのポイントは、次回のブログでお伝えします。次回もぜひご覧くださいね。
当院からのお知らせ
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